元中学校教師の戯言

元中学校教師のぐうたら日記

40人の中学生が、山の中で姿を消した事件

 

梅雨に入り蒸し暑い日が続きますね。

 


私には、こんな季節になると

思い出す出来事があります。

 

 


実は、私は過去に一度だけ

「もしかしたら、俺はこのまま

死んでしまうのかも知れない・・・」

と思った事があるのです。

 


それは30年程前(教師時代)の出来事で、

林間学校に生徒を引率した時の

話になります。

 


林間学校に参加したのは

2年生の8クラス、300人ほどの生徒と

私を含む引率教師13人です。

 


その日、参加者全員で

山の中のハイキングコースを1組を先頭に

以下2組、3組・・・7組、8組の順で

1列または2列で移動していました。

 

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そのコースは平坦な場所が多く、

ほとんど分岐もなく初心者向けでしたので、

迷ってしまう心配はほとんどありませんが、

ハイキングコースの道のりを知っていたのは

私を含めた3人の教師だけだったのです。

 


そして、コースを知っている

3人の教師のうちの1人が先頭の1組に、

真ん中の4組と5組の間に私、

そして、もう1人が後尾の8組に

付いていました。

 


さて、ハイキングをスタートすると、

最初は列は短かったのですが、

だんだん先頭の1組と後尾の8組の間が

開いてしまったのです。

 


しかも山道ですので、

間が開いてしまうと前の人間が見えません。

 


私と言えば、体が弱く

歩きの遅い生徒の面倒を見ていたために、

気がついた時には、ほとんど

後尾に近い7組と一緒に歩いていました。

 


そして、ゴールに到着すると

私が担任するクラス(5組)の

生徒全員(40人)と

5組の辺りを歩いていた

引率教師2人だけがいないのです。

 


5組を除く他のクラスの生徒全員と

他の引率教師はそろっていました。

 


ハイキングコースの途中に

分岐箇所が1つだけあり、

私のクラスの生徒だけが

別な方へ行ってしまったのですね。

 


「これは大変なことになったぞ!」と思い、

私は引率責任者の教頭に状況を説明すると

1人で捜索のためにハイキングコースに

逆戻りしました。

 


私は焦りながら何とかしなくてはと、

山の中を走っていたのですが、

コースの途中に湿地帯があり、

板敷きの歩道になっている所で、

何かにつまずいて転んでしまったのです。

 

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さらに運悪く、転んだ場所に

板を固定するための杭があって、

その杭に胸を打ち付け

痛みで動けなくなってしまいました。

 


そして、

「もしかしたら、ここで遭難して

死ぬのかも知れないなぁ」

と考え始めたのです。

 


でも、不思議と恐怖はありませんでした。

 


なぜか、落ち着いていたというか、

あきらめの境地になっていたのです。

 


その後の私の記憶は飛んでしまい、

気がつくと

1時間以上の時間が経過していました。

(おそらく気を失っていたと思われます)

 


私は湿地帯にずっと横たわっていたので

服はびしょ濡れ、体は冷え切っていました。

 


空を見ると

かなり日が傾いていて夕焼け空です。

 


私はあきらめの境地でしたが、

体が動くか、もう1度だけ

試してみようと思いました。

 


すると、痛みはあるものの

体が動くではありませんか。

 


私はゆっくりと立ち上がると、

体を引きずりながら

ゴール地点を目指しました。

(生徒の捜索をする体力は残っていません)

 


そして、日が沈む頃にゴールに到着すると

そこには、疲れ切って座り込んでいる

私のクラスの生徒たち40人と

一緒だった教師2人がいたのです。

 


話しを聞くと、

道を間違え別の方向に行ったものの、

最終的には遠回りをして

ゴール地点に着いたらしいのですね。

 


何はともあれ、

私がホッとした事はご想像出来ると

思います。

 


さて、何故、

こんな失敗が起こったのか分かりますか?

 


コースが単純であるし、集団での移動なので

教師全員が迷う可能性が低いと

甘く考えてしまったのです。

(宿泊先のホテルの話でも、初心者向きで

迷う可能性が無いと説明がありました)

 


簡単だからと言って

山道を甘く見てはいけないのですね!